生殖医療技術に関する諸外国の規制状況 2001.6.18現在 (空欄は法文及びガイドラインにも解説論文にも記述なし)                                                       






 



主な規制法・ガイドライン


 

人工授精(AI)

体外受精・胚移植(IVF-ET)


胚提供
(AI-ET/
IVF-
ET)

 

代理出産(契約)


配偶子
提供の
条件

 


生まれてくる子どもの保護

 


精子提供回数制限


 


受精卵
の凍結
保存期間

 



死後受精


 

受精卵の実験研究

出生前診断


キメラ・ハイブリ ッド・
クローン
 



注・備考


 

配偶者間人工授精
(AIH)

非配偶者間人工授精
(AID)

配偶者間体外受精
 

精子提供型体外受精
 

卵子提供型体外受精
 

ホスト・マザー
(借り腹)

 

サロゲイト・
マザー
 

余剰胚

実験利用

 

実験目的の
胚作成

 


胎児診断

 

胚の
着床前
診断

 

@日本






 

日本産婦人科学会会告(1983〜)a

 



 



 



 


×
 


×
 


×
 


×
 


×
 


×
 

出自を知る権利を認めない



 

婚姻中
母体の生殖年齢中


×
 

受精後14日まで
 

受精後14日まで
 

医学的対応に限定
 

条件付きで認める
注1)


×
 

注1)1983年の会告では認めていなかったが,1998年に認可。

注2)実費の半額程度の謝礼は認める。
注3)兄弟姉妹等から提供を受ける場合を除く。
兄弟姉妹等の範囲は個別で審査する。なお,本報告書の内容を3年以内に立法化することを勧告。また,実験と出生前診断については,同様に,厚生科学審議会先端医療技術評価部会にて論議されている。  
注4)クローン技術規制法(2001年施行)による。

参考 厚生科学審議会「生殖補助医 療に関する専門委員会」最終報告 (2000.12)b
 



 



 



 



 



 



 


×

 


×

 

本人同意無償注2)
匿名注3)
 

限定つきで出自を知る権利を認める

10人まで(卵・胚も含む)
 




 


×

 




 




 




 




 



注4)
 
生殖年齢にある不妊症の婚姻夫婦に限る

Aノルウェー
 

生命工学応用医療法(1994)c
    (←人工授精法)(1987)


 


 


 

×
 

×
 

×
 

×
 

×
 


 


 


 

1年
 


 

×
 

×
 


 


 

×
 

Bスウェーデン



 

人工授精法(1984)d
体外受精法(1988)e
受精卵研究・治療法(1991)f

 



 



 



 



×

 



×

 



×

 



×

 



×

 


本人同意
無償

 

嫡出否認を禁止
出自を知る権利を認める





 

1年 (社会庁の許可により延長可)
 





 

条件下で認可(受精後14日まで)
 


中絶との関係で
未定
 



規制なし

 



規制なし

 



×

 

2000年9月,厚生省から1988年の体外受精法をより詳しく規定した体外受精及び関連法の改正案が国会に提出されている。           
 
婚姻夫婦か2年以上同居中の男女カップル

Cドイツ



 

胚保護法(1990)g
養子縁組斡旋法改正(1989)h
親子関係法改正法(1997)i
ドイツ連邦医師会指針       (1985,1988)j



 



 



 


×


 


×


 


×
原則
禁止
注5)



×

 



×

 


卵提供
禁止

 

嫡出否認を認める出自を知る権利を認める





 



2年

 



×

 


受精の時点から
禁止
 



×

 



規制なし

 


法解釈が分かれる
(討議中)
 



×

 

注5)余剰胚の生命維持の目的での可能性が残されている。


 
医学的不妊婚姻の
カップルに限る

Dオーストリア



 

生殖医療法(1992)k



 



 



 



 



×

 



×

 



×

 



×

 



×

 



×

 

嫡出否認の禁止
出自を知る権利を認める



3組まで

 



1年

 





 



×

 



×

 

遺伝病回避のための性選択は認める
 

遺伝病回避のための姓選択は認める
 



×

 





 
婚姻夫婦か3年以上同居中のカップル

Eスイス




 

連邦憲法24条9項(1992)l
スイス医学アカデミー倫理基準
 (1981, 1985, 1990)m
各州法

 




 




 




 





×


 



×


 



×


 


本人同意無償
匿名

 

提供者を特定できない情報を提供

 



10人
まで

 


両パートナーの生存中

 



×


 



×


 



×


 


遺伝病の回避は
認める

 



認める


 



×


 

フランス・イタリア語圏に比べてドイツ語圏の州は一般的に規制が厳しく、配偶者間人工授精以外は認められていない州もある。


 
卵子か精子の
何れかの提供
を認める
子どもの養育義務を負う意思のある
婚姻者または準婚姻者

Fデンマーク


 

倫理委員会制・生物医学研究法  (1992)n
卵子の凍結と提供に関する政令  (1992)o







×

 


×

 


×

 




 

出自を知る権利は否定
 




 


1年

 


×

 

受精後
14日
まで
 




 

遺伝病の回避は
認める
 


認める

 


×

 




 
公立病院では婚姻夫婦か3年以上同居中のカップル,私立は既婚・未婚の別なし,女性は45歳未満

Gカナダ・
 ケベック州

 

民法改正538-542条(1994)

 



 



 



 



 



 



 


×
 


×
 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 

Hフランス





 

生命倫理三法(1994)p





 





 





 





 





注6)

 



×



 



×



 



本人同意無償
匿名

 

嫡出否認の禁止

出自を知る権利は否定
 




4人まで


 


最高5年まで
1年ごと
確認

 




注7)


 



原則禁止例外を
認める

 




×


 




認める


 



目的・実施施設を限定し
認可
 


「人類の遺伝的一体性の侵害」を
禁止
 

注6)不妊カップルの余剰胚のみ,カップル内での生殖技術を用いたが子ができなかったカップルに譲渡できる。                注7)余剰胚を提供したカップルの片方の死後,そのパートナーが認めて他の不妊カップルに譲渡された時のみ。他の厳しい条件と重なるので例外中の例外と考えられる。
配偶子のどち
らかはカップ
ルのを使用
 
医学的不妊,生殖年齢にある生きた男女のカップル(婚姻外の場合は2年以上の共同生活)

Iオーストラリア  ・ヴィクトリア州

 

不妊治療改正法(1997)q
(←不妊(医学的諸措置)法(1984,
 1987))
子どもの地位(改正)法(1988)r



 



 



 



 



 



 


×

 


×

 

本人同意無償
匿名
 注8)

出自を知る権利を認める
 




 


5年

 


×

 

条件付き許可(受精後14日まで)


×

 




 




 




 

注8)特定の人物からの提供を指定できる。


 
婚姻カップルのみ,要カウンセリング

Jイタリア



 

イタリア医師会倫理基準(1995)



 





 





 





 





 





 





 



×

 



×

 





 





 





 





 





 





 





 





 





 





 

勧告や報告書の一方で代理出産を含めかなり自由な施療が行われている。1999年,2年以上の不妊夫婦か長年連れ添った事実婚の人工授精と体外受精を認め,独身者,同性愛者,夫の死後の受精卵着床も認められない法案が下院を通過した。

Kスペイン

 

生殖技術規制法(1988)s
胚・胎児の提供・利用法(1985)t
 


 


 


 


 


 


 


×
 


×
 

19歳
以上
 

出自を知る権利は限定


5人まで
 


5年
 



 

受精後
14日
 



 


認める
 


認める
 


×
 



 
      既婚・未婚の区別なし

Lイギリス



 

ヒト受精・胚研究法(1990)u
代理出産取り決め法(1985)v


 




 




 




 




 




 




 




 




 


本人同意無償
匿名
 注10)

嫡出否認
の禁止
出自を知
る権利は限定


妊娠10
回まで

 


最高10
年まで

 


精子の死後使用
認める
 


受精後
14日

 


受精後14日までのみ認可
 



規制なし

 



規制なし

 



×

 

注9)カウンセリングで婚姻カップルに絞り込む傾向が強い。
注10)配偶子の提供は19歳以上の男女,35歳未満の女性,55歳未満の男性に限る。
既婚・未婚の区別なし,要カウンセリング注9) 商業的なもの禁止
不妊学会の指針は非医学的理由によるホスト・マザーを除く全ての生殖技術を医療行為及び臨床実験として認めている。したがって,州法の規制がない限り,すべての生殖技術を使える。クローニングも国家助成がない点を除けば規制はない。
 

Mアメリカ



 

アメリカ不妊学会ガイドライン   (1984〜)
統一親子法(1973)w
各州法
 



 



 



 



 



 



 




規制なし


 


嫡出認定


 


妊娠15
回まで

 


規制なし


 


規制なし


 

規制なし
(国家助成の凍結 解除)
 


規制なし


 


規制なし


 


規制なし


 

国家助成は認め
ない

 
10州で
有償契約無効
規制なし(既婚・未婚,異性愛者・同性愛者の別なし)
 
 






















































































 
上記の他,イスラム教の国,カトリックの影響の強い南米諸国では卵子や胚の提供は禁止の傾向が強い(我妻 1997)。中華人民共和国では1998年時点で生殖技術法制定を検討中,台湾では行政府が代理出産を合法化する法案を議会に提出して審議中と伝えられる(島 1998)。
ユダヤ教ではドナーが独身女性であれば胚のdonationが,また,ヒンズー教や仏教では胚の提供が許可されると言われる(我妻 1997)。なお,カトリックでは,1987年の教書で例外的に認めるAIH以外の生殖技術を禁じている。


作成:大谷いづみ UP 20040727