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『受精卵診断と生命政策の合意形成
――現代医療の法と倫理(下) ドイツ連邦議会審議会答申』


ドイツ連邦議会「現代医療の法と倫理」審議会 20061125 知泉書館,xiii 316p. 


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ドイツ連邦議会「現代医療の法と倫理」審議会,  Enquete-Kommission Rechit und Ethik der modernen Medizin, 2002, Enquete-Kommission Recht und Ethik der modernen Medizin, Schlussbericht, Deucher Bundestag Referat Offentlichkeit(Herausgeber), (=ドイツ連邦議会「現代医療の法と倫理」審議会, 松田純監訳・多田茂・池田喬・大河内泰樹・中野真紀訳, 20061125, 『受精卵診断と生命政策の合意形成――現代医療の法と倫理(下)』, 知泉書館)ASIN: 4901654853 4500+税 [amazon][boople] oi

内容(「BOOK」データベースより)
ドイツ連邦議会審議会答申。進化し続ける生命科学と先端医療技術の進展に伴い、生命倫理と法の世界に多くの未知の問題群が投げかけられている。このような状況のなか、ドイツ連邦議会は生命倫理に関する法律を制定するために実際的で具体的な検討を審議会に要請した。本書は生命科学から人文・社会諸科学にわたる幅広い専門家と議員による審議会が、欧米諸国の状況をも視野に入れ徹底的に議論した画期的な答申の全訳。

内容(「MARC」データベースより)
ドイツ連邦議会「現代医療の法と倫理」審議会によってまとめられた生命倫理に関する画期的な答申を翻訳。生殖補助医療に関わる複合的テーマ群を多角的に考察、着床前診断の可否や多元的社会での合意の可能性を探る。


■目次

第1部 着床前診断
 第1章 体外受精と着床前診断
 第2章 着床前診断の検討のために参照すべき出生前遺伝子診断に関する経験
 第3章 着床前診断
第2部 議論と参加
 第1章 民主主義に伴う要求
 第2章 提言
第3部 残された課題
 第1章 規則を必要とする諸分野
  I 配分(Allokation)
  II 同意能力のない人に対する研究
  III 死の看取り、臨死介助
   1 死の看取りに関わる諸問題
   2 臨死介助(Sterbenhilfe安楽死)の諸問題
    2-1 法的状況と倫理的判断
    2-2 連邦医師会の諸原則
    2-3 患者による事前指定
    2-4 欧州連合理事会報告書
   3 結論と提言
  IV 移植医療
 第2章;全体を貫くテーマ
第4部 倫理的議論をさらに進めるための全般的な提言
  I 審議の仕方と方法
  II 公衆との対話
  III ドイツならびに外国における倫理をめぐる議論の構造


 


■引用


>目次

第3部 残された課題
 第1章 規則を必要とする諸分野
  III 死の看取り、臨死介助

 「集中医療の可能性が増大し、同時に医療倫理における温情主義的(パターナリスティック)な考え<242<が弱まり、患者の自己決定がいっそう強調されるようになったのを背景に、議論が先鋭化してきている。オランダでの展開を背景に、要請に基づいてしなせること(die Totung auf Verlangen嘱託殺人)(積極的安楽死aktive Sterbenhilfe)をめぐって再び議論が激しくなった。これは歴史的な経験を背景にした警告を再び呼び起こしている。つまり、重病人の自己決定に基づいて死なせる(selbstbestimmte Totung)という考えは、障害のある人や「生きる価値のない(lebensunwert)」とみなされた人を他人の決定によって死に追いやること(fremdbestimmte Totung)と分かちがたく結ばれているという歴史的教訓である。[……]」(Enquete-Kommission Ethik und Recht der modernen Medizin, 2002=20061125: 242-243)


>目次

   2 臨死介助(Sterbenhilfe安楽死)の諸問題
    2-1 法的状況と倫理的判断
 「刑法第216条の改正に対しては、根本的な異議が出されている。異議の理由には、次のようなものがある。歴史的な経験をふまえて「生命の保護」が基本法に定められている。積極的な安楽死の導入によって、医師への治療委託が〔殺害の委託へ〕転倒する。死なせてほしいという要請が間接的に表明されたと推測される際に、法律上の不確実さが避けられない。それと結びついて拡大解釈や濫用の危険があり、診療にさまざまな結果を及ぼしかねない、といったものである。患者の自律(自己決定)を一面的に強調することによって、医師の配慮義務がなおざりにされかねないと懸念されている。それに加えて、歴史的な背景をふまえれば、積極的な安楽死を許せば、重病人や障害をもつ人あるいは老人は、〔まわりが安楽死を〕期待するプレッシャーを感じざるをえないであろう。また、「生きる価値がある“lebenswert”」、「生きる価値がない“lebensunwert”」という規定をめぐる議論が新たに活発化しかねないという恐れもある。<247<
 要請に基づく殺害禁止の撤廃は、重要な社会的諸団体によって拒否されている。にもかかわらず、積極的に死なせることを許す手前で、さまざまな問題が生じている。とりわけ、末期ではないが不治の病を患う患者に対して、生命維持措置を中止したり行わなかったりという形の問題。意思表明ができない、もしくはもうできなくなった患者に対して治療を中止するという問題などである。これらについては、医師の職業法での規則が特に重要である。」(Enquete-Kommission Ethik und Recht der modernen Medizin, 2002=20061125: 247-248)

    2-2 連邦医師会の諸原則
「[……]連邦医師会は1998年に、「医師による死への看取りについての諸原則」を新たに公表した。[……]  この「諸原則」は要請に基づいて死なせることを、誤解の余地なく拒否していながらも、死が迫っている者、あるいは予後が思わしくない〔もう治る見込みがない〕患者がある特定の状況にある場合、生命を維持するという医師の義務にもかかわらず、生命維持のための措置がもはや適切ではないことも強調している。このような場合、治療を中止する代わりに、治療目標を苦痛を緩和する医療措置の方向に転じなければならない。これには、重篤な障害をもった新生児に対して両親の了解のもとに、生命維持措置を行わない、ないしは続行しないということ(「初期安楽死(Fruheuthanasie)」とも呼ばれる)も含まれる。」(Enquete-Kommission Ethik und Recht der modernen Medizin, 2002=20061125: 248)

 「「諸原則」は、末期ではない重病人までも含めている点や、かかるグループに対してまで「推測される意思」を引き合いに出している点で批判されている。とりわけ、本人の意思を形成しようがない重篤な障害をもつ新生児に対して、「推測可能な意思」という司法概念を用いることはできない。
 予後が思わしくない〔もう治る見込みがない〕あるいは重篤な障害を負った患者に対する生命維持措置の中止は、末期患者に対するそのような措置の中止と同一視できない。末期患者の死に至る過程を引き延ばさないこと(Nicht-Verlangerung des Sterbeprozess Sterbender)は、重病者の生きる過程を縮めること(Abkurzung des Lebensprozesses schwer Kranker)から、法的にも倫理的にも区別されなければならない。[……]実際の診療のなかでは、予後の評価は非常に異なることがよくあるからだ。」(Enquete-Kommission Ethik und Recht der modernen Medizin, 2002=20061125: 249)

 「総じて、不治ではあるが末期ではない患者までも〔治療中止の対象に〕含め、かかるグループにも、推測可能な患者の意思を持ち出すことによって、「諸原則」の意図に反して、消極的安楽死と積極的安楽死との協会も判別できなくなるという危険があろう。」(Enquete-Kommission Ethik und Recht der modernen Medizin, 2002=20061125: 250)
 
    2-3 患者による事前指定
 「患者による事前指定書という構想に対しては、さまざまな批判的な異議が出されている。どういった状況のなかで事前指定が成り立つのかが検討されていない。事前指定がさらに合法化されることによって、医者-患者関係が空洞化する。治療費がどれくらいかかるかを前もって算定する義務を理由に自己損傷を助長する……等々といった異議が出されている。」(Enquete-Kommission Ethik und Recht der modernen Medizin, 2002=20061125: 251)
 ※上記記述はDorner(2002)に依る。本書出典注p275, 37)。
 
    2-4 欧州連合理事会報告書
 「欧州連合理事会による1999年の「危篤患者および末期患者の人権と尊厳の保護に関する報告書」は、国際的な議論の高まりや安楽死の拡大が差し迫っているなかで、批判的指針を提示した。すなわち、個人の自己決定を強調しながらも、同時にしかしEU加盟国に、患者個人が死の脅威から守<251<られる基本的な権利を擁護することを要求した。自己決定する権利と尊厳をもって死ぬ権利には、死亡させられる権利は含まれていない。さらに、苦痛緩和医療を促進すること、とりわけ医療者の専門養成教育や、そのほか関連する職業グループすべての養成教育のなかに緩和医療〔教育〕を確立する手だてをとるよう、加盟国に勧告している。」(Enquete-Kommission Ethik und Recht der modernen Medizin, 2002=20061125: 251-252)




UP:2007●
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