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「市民的自由」としての死の選択――松田道雄の「死の自己決定」論――
大谷 いづみ
2006/01/05
『思想』981:101-118
「しかし,死の自己決定権,老人の自殺権において松田の主張が一貫しているとすれば,そして,その点に於いて,松田と太田が一致していたとするならば,注目すべきは,にもかかわらず(「にもかかわらず」に傍点),心身障害者の異議申し立てに応答して安楽死法制化を批判したことにある。そして,その一点に於いて,松田と太田の相異が明確に抽出できるのではないだろうか。では,その批判の論理とは何であったのか。」(p.106)
■目次
1.松田道雄と太田典礼
2.「安楽死」論の変遷
3.「市民的自由」としての生死の選択
4.老人問題のコペルニクス的転換
5.「老い」と「障害」と「病」の分節と錯綜
■参考文献
- 安達倭雅子 1980「「子殺しを考える会」の活動の中で私の見たもの」佐々木編 [1980: 262-277]。
- 唄孝一・松田道雄 1986「医と法の接点で(患者の自己決定権はなぜ必要か)」『世界』491:211-220。
- Clark, Brian 1978 Whose Life is it Anyway? Amber Lane Productions (=新庄哲夫訳1979『この生命誰のもの』河出書房新社。).
- 医事法学会 1972「討論(巻末特集:望みなき(?)患者の治療――医療とは何か 医事法学会シンポジウム)」『法律時報』1972-11[532]:198-207。
- 加藤一郎・森島昭夫編 1984『医療と人権――医師と患者のよりよい関係を求めて』 有斐閣。
- 河口栄二 1982『我が子,葦舟に乗せて』新潮社。
- 川本隆史 1997「老いと死の倫理──ある小児科医の思索を手がかりに」『現代日本文化論9・倫理と道徳』岩波書店。
1998「講義の七日間──共生ということ」『共に生きる』(岩波新・哲学講義6):001-066
- Kutner, Luis. 1969 "Due Process of Euthanasia: The Living Will, a Proposal." Indiana Law Journal 44, no. 4:539-554.
- 松田道雄 1953「安楽死について」『芝蘭』1953-4:4-8→松田[1980:26-35](「安楽死と医学」に改題)。
1961「チェーホフと森鴎外の選択」『図書』→松田[1980:37-39]。
1969「いかに死ぬべきか」『週刊アンポ』1・2→松田[1975:45-67]。
1971a「晩年について」『暮しの手帖』10:188-193→松田[1971b→2001:225-247]。
1971b→2001『われらいかに死すべきか』平凡社。
1972a 「安楽死について」『暮しの手帖』17:184-187→松田[1980:84-93]。
1972b「生きる権利」『日本医事新報』1972→松田[1980:97-99]。
1972c「安楽死問題で気になる点(特集:二十五周年・安楽死)」『しののめ』75:15-16。
1973「死について」清水編『人生というもの』潮出版社→松田[1975:143-163]。
1974「安楽死と弱者の論理」『潮』186:192-205→松田[1975:129-142]。
1975 『人間の威厳について』筑摩書房。
1979「安楽死問題と死をめぐる自己決定権――演出上の問題点」(クラーク『この生命誰のもの』解説,Clark[1978=1979:169-176])
1980『生きること・死ぬこと(松田道雄の本7)』筑摩書房。
1983a「植物状態(「ハーフ・タイム」)」『毎日新聞』1983.6.15→松田[2002:282-283]。
1983b「ノーサイド(「ハーフ・タイム」)」『毎日新聞』1983.9.28→松田[2002:315-321]。
1983c『安楽死』岩波書店。
1983d→2002『日常を愛する』平凡社。
1986「市民的自由としての生死の選択──老人問題のコペルニクス的展開」(シリーズ『老いの発見』2)岩波書店→松田[1988:87-107]→松田[1997c:99-132]
1988『わが生活わが思想』岩波書店。
1996「お医者はわかってくれない」『図書』→松田[1997c:41-6]。
1997ab「高齢者介護の問題点 正・続(インタヴュー,聞き手:岩波書店・大塚信一)」『図書』→松田[1997c:63-97]。
1997c『安楽に死にたい』岩波書店。
1998『幸運な医者』岩波書店。
- 松田道雄・唄孝一 1984「対談:日本の医療を問う(第2部 医療と人権,第6章)」加藤・森島編[1984: 176-208]。
- 松田道雄・宮田さよ子 1997「88歳松田道雄翁に宮田さよ子が聞く「最高齢期はキュアよりケアを」」『いのちの花通信』1997:2-13。
- 宮野彬 1971 「アメリカ安楽死協会の活動状況」 『ジュリスト』1971-12-15[495]:84-92。
- 森岡正博 2001『生命学に何ができるか――脳死・フェミニズム・優生思想』勁草書房。
- 荻野美穂 2005「障害を理由とした中絶とフェミニズム――アメリカの場合,日本の場合」『思想』979:85-111。
- 太田典礼 1972「立法化への基準」太田編[1972:232-251]。
- 太田典礼編1972『安楽死』 クリエイト。
- 大谷いづみ 2003「「いのちの教育」に隠されてしまうこと――「尊厳死」言説をめぐって」『現代思想(特集:争点としての生命)』2003-11→大谷2005a
松原・小泉編『生命の臨界――争点としての生命』91-127。
2004「「尊厳死」言説の誕生」『現代思想(特集:生存の争い)』2004-11:142-152。
2005b「太田典礼小論――安楽死思想の彼岸と此岸」『死生学研究』5:99-122。
2005c「1970年代における安楽死法制化運動とその挫折が含意するもの 太田典礼と日本安楽死協会」第31回日本保健医療社会学会(2005.05.14/15 於:熊本学園大学)発表レジュメ・資料。
2005d「1960-70年代の「安楽死」論と反対論が示唆するもの――「しののめ」誌と「青い芝の会」による障害者からの異議申し立てを中心に」第2回障害学会(2005.9.18/19 於:関西大学)発表レジュメ・資料。
- 佐々木保行編 1980『日本の子殺しの研究』 高文堂出版社。
- 清水幾太郎編1973『人生というもの』(人間の世紀7巻)潮出版社。
- 立岩真也 2001「死の決定について・4──松田道雄のこと」(医療と社会ブックガイド・7)『看護教育』42-7(2001-7):548-549。
- 八木晃介 1997「松田道雄さんへの疑問『安楽に死にたい』(岩波書店1997.4)の内容にそくして」『社会臨床雑誌』5(2):106-110。
- 米沢慧 2002『ホスピスという力――死(いのち)のケアとはなにか』日本医療企画。
- 米沢慧・内藤いづみ1999『往復書簡:いのちに寄り添って』オフィスエム。
★『思想』掲載の本文中,お名前に下記の誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
誤 八木晃一 → 正 八木晃介
・114p 下段注(3) 3行目
・118p 下段20行目
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